イギリスのEU離脱が国民投票で決定されました。
世界の経済に多くの影響をもたらす可能性がある中で、各国の協調姿勢が必要となっています。その中でイギリスの一部であるスコットランドの独立運動が再燃しつつあります。
スコットランドはイギリスの北部に位置する地域です。そもそもイギリスは4つの国の連合王国という位置づけで成り立っており、そのうちの一つがスコットランドです。
スコットランドでは国民投票が全ての選挙区でEU残留を支持する結果となったこともあり、2014年の独立運動のような状況に進んでいく可能性もあります。
この記事では独立問題の背景と2014年の独立運動の状況、独立のメリットやデメリットについて考察します。
スコットランドが独立したい理由
なぜスコットランドが独立したいか、その理由は大きくわけて2つあります。
1つは北海油田の存在です。1960年代にイギリスの北部にある北海にて油田が発掘され、イギリスに今日も莫大な利益をもたらし続けています。スコットランドが独立することで、北海油田の利益を全て享受することができ、経済的にも豊かになるのではと言われています。
もう一つの理由としてはロンドンへの一極集中です。GDP(域内総生産)で比較すると首都ロンドンと地方との格差は世界で第2位の開きがあります。
ロンドンで大きく雇用が増えているのに対し、地方では産業の衰退が起こってしまっている状況です。独立によってその不公平感を小さくするのも狙いの一つとされています。
2014年の独立住民投票の経緯と影響は?
2014年のスコットランド独立住民投票は、スコットランド議会にて独立を公約に掲げる党が過半数を取ったことで、一気に住民投票への機運が高まったことで行われました。
最終的には独立反対で決着がつきましたが、反対約55%、賛成約45%と僅差となりスコットランドを割る事態となりました。
この投票によってイギリスの他の地域やヨーロッパの諸地域において独立を含む権限の委譲要求の機運が高まったとされています。
もしも日本のある地域でそのようなことが起きたら、経済的にも国民の感情的にも悲しい結果になりそうに思いますし、投票が行われること自体が大きな影響を与える事態となるのは想像がつきやすいのではないでしょうか。
スコットランドがEUに残留するメリット・デメリット
スコットランドが独立し、EUに残留した場合のメリットとデメリットをご紹介したいと思います。
◇メリット
スコットランドがEUに残留した場合のメリットとしては、先ほど独立したい理由で紹介した北海油田の利益や格差解消の他に、酒税など各種権限が自由に決められること、そしてその自由を基としてEU域内で経済活動を活発に行うことができる点です。
特にEUに残留していれば出入国の移動がより自由に行えること、貿易時の関税などコストを抑えることで今までと同じようにEUの国の一つとして国を運営していくことが可能となります。
スコットランドの自主性が十分に保たれるという点では、大きなメリットと言えるでしょう。
◇デメリット
スコットランドが独立し残留するデメリットとしては、そもそも先進国である「イギリス」のメリットを受けられなくなるという点にあると思います。
経済活動やポンド通貨の価値、そして福祉・年金制度はイギリスが歴史をかけて培ってきたものであり、それを失うことの影響は計り知れません。また現在スコットランドの輸出の6割はイギリス国内に向けての輸出であり、そこに新たな関税が発生するような事態となれば、経済の大きな足かせとなることは間違いないでしょう。
少し自主性は失われても、経済的メリットやリスク回避の面ではイギリスの国の一部として存在することに意味があるのかもしれません。
まとめ
スコットランドの独立とEUの残留に向けて、スコットランド自治政府の首相は「あらゆる手段を利用し独立を検討する」との表明を発表しました。
独立に向けての住民投票を行うためにはイギリス政府の承認が必要ですので、事態が急展開することは考えにくいでしょう。
しかし、独立のメリット・デメリットを十分に吟味し、住民の意思形成が進めば、可能性は高くなってきます。拙速な決断は国内だけでなく海外への混乱を招く可能性もありますし、まずは十分な議論が尽くされることを望みます。
スコットランドの方々にとってより豊かな生活ができる決断を、もう一度一人ひとりが考えていくことが必要でしょう。