日本三大祭りのひとつにも数えられる祇園祭。1100年もの長い歴史を持ち、京都の夏を盛り上げる風物詩です。
もともとは、疫病を払うために始まりましたが、京都の有力な町衆たちが競い合って山鉾を飾り、今日のような豪華な祭となりました。
祭の期間は、なんと1ヶ月。今回はその中でも、注目のイベントと祇園祭の華「山鉾」の鑑賞ポイントをお伝えします。
2016年の主な日程と見どころは?
祇園祭は、毎年7月1日から7月31日までの一か月間にわたって行われます。
この間に様々な催しが行われますが、特に注目度の高いものをご紹介します。
7月10日:神輿洗いとお迎え提灯
おみこしを蔵出しし、鴨川からくみ上げた水で清めるのが「神輿洗い」です。
水は朝に四条大橋から予備を含めて6桶分くみ上げて、夜の本番まで大切に保管されます。 この水は、「神水」「神用水」と呼ばれ、飛沫をあびると疫病退散や厄除けに効果があるそうです。
また、町内ではおみこしをお迎えするために、「お迎え提灯」と呼ばれる行列が行われます。この日の主役は子どもたち。祇園囃子の音と共に町内を練り歩く可愛い姿に、町は一気に華やぎます。
7月14日~16日:前祭宵山
祇園祭の中で最も盛り上がるのが、宵山から山鉾巡行までのこの期間です。
もともとは、お祭りの前夜祭として始まったものですが、祇園祭といえば駒形提灯で飾り付けられた山鉾が完成するこの期間を想像するかたも多いのではないでしょうか?
通りには歩行者天国が設定され、たくさんの露店が立ち並ぶ様はまさにお祭りといった風情です。
また町会所では、この時期限定で宝物が公開されたり、お守りの販売をしています。人気のある町会には長蛇の列が出来るので計画的にまわりましょう。
7月17日:前祭山鉾巡行
祭のクライマックスは、なんといってもこの山鉾巡行です。
いよいよ出番となる山鉾は、スタートの9時に間に合うように町会所に展示されていたご神体や装飾品を取り付け、四条烏丸に向かいます。
「エンヤラヤー」の掛け声とともに、長刀鉾を先頭として四条通を通り河原町通りを北上して御池通りを曲がり新町御池で解散します。
山鉾は厄を集めて、おみこしが通る前に町中を清めると考えられているため、町会所に戻った山鉾はすぐに解体・収納されます。
7月17日:神幸祭(神輿渡御)
午後4時から行われるのが本来の祇園祭の本番である「神幸祭」です。
八坂神社から三基の大きなおみこしが繰り出し、総勢1000人以上の担ぎ手によって豪快に町内を練り歩きます。
その姿は「暴れ神輿」とも呼ばれ、町の各所で盛大な歓声が上がります。
7月24日:後祭山鉾巡行と花傘巡行
おみこしが神幸祭で渡った後、後述の還幸祭で八坂神社に帰るまでの期間は「後祭」と呼ばれています。
1966年に市内の交通規制の関係で後祭の山鉾巡行は前祭に統合されてしまいましたが、その代わりとして始まったのが「花傘巡行」です。
祇園と言えば舞妓さんに代表される芸能の街でもあります。花傘巡業では、その地域性を反映して芸能的な色彩の強い華やかな行列を見ることができます。
また、2014年からは統合されていた後祭の山鉾巡行が復活しています。
前祭よりも台数は少ないのですが、まだ始まったばかりの行事ということもあり観光客も少ないので豪華な山笠をゆっくり心行くまで鑑賞することができます。
祇園祭の見どころ!「山鉾」を隅々まで楽しむための鑑賞ポイント
このお祭りの見どころは、「動く美術館」とも呼ばれる山鉾です。
豪華絢爛に飾り付けられた山鉾は他のお祭りでもみることができますが、祇園祭の山鉾は美術館に展示されていても全く見劣りしない一級の「美術品」で飾られています。
そんな山鉾をより楽しむために押さえておきたい鑑賞ポイントをご紹介します。
(1)函谷鉾を飾る16世紀ベルギー製のタペストリー
出典 http://blogs.yahoo.co.jp/kobayan717/
中国の故事『鶏鳴狗盗』をモチーフとして作られた山鉾ですが、前掛け部分に16世紀にベルギーで作られたゴブラン織りのタペストリーが使われています。
旧約聖書の一場面でアブラハムの息子イサクの嫁を探している老僕に、リベカという女性が親切にも水を提供するという場面です。
下半分にはこの場面の続きとして老僕がリベカに、イサクと婚約するための腕輪を送っているシーンが描かれており、ストーリー性のある珍しいタペストリーとなっています。
(2)鯉山を飾る左甚五郎作の木彫りの鯉
鯉山の象徴となっている木彫りの鯉と波は、江戸時代の伝説の名工・左甚五郎の作と言われています。
左甚五郎と言えば、日光東照宮の眠り猫を彫った人物としても有名で実在する・しないを含めて様々な逸話にあふれている偉人です。
龍門の滝を登る大きな鯉と荒々しい波の躍動感は一見の価値ありです。
(3)占出山を飾る三十六歌仙図と日本三景の綴錦
神功皇后がご神体として飾られる占出山を華やかに彩るのが三十六歌仙の水引と、日本三景の前懸・胴懸です。
在原業平や小野小町の姿が描かれた緋色の豪奢な水引と、「松島」「宮島」「天橋立」に描かれたさわやかな水色のコントラストが夏の京都に清涼感を感じさせます。
近年になって新調されているため非常に鮮やかで美しい山鉾飾りです。
(4)月鉾を飾る絵師・丸山応挙の「金地彩色草花図」
京都の歴史は戦争の歴史と裏表にあります。山鉾の中には、戦火で失われたものも存在します。
そんな中で、幸運にもほとんど被害がなく受け継がれているのがこの月鉾です。
鉾頭の18金の三日月やご神体の持っている櫂には1573年と彫られており、これは武田信玄が死去した年と同じです。
そんな中で注目したいのが、江戸時代の絵師・円山応挙の描いた「金地彩色草花図」。
写実的な絵柄で知られる応挙の細やかな筆致で描かれた美しい草花は、屋根裏にあるため見落としがちですので要注意です。
これらの山鉾の飾りは、宵山期間は町会所で展示されている場合があります。
また安産にご利益がある神功皇后の占出山鉾では、安産祈願のお守りが配られるなど各町で趣向を凝らしていますので、宵山見物もおすすめです。
2016年のポイント|「大船鉾」の船首に飾られた「龍頭」
出典 http://kyoto11.blog.fc2.com/
祇園祭の山鉾として認められていながらも、巡行に参加できない「休み山」と呼ばれる鉾があります。その多くは戦火や災害により失われ、資金面や人材面での復興が難しい山鉾です。
これらの山鉾があった町は、装飾品等を町会所に飾り、町内のみで祇園祭を祝います。そんな中、2014年に見事復興を果たして33番目の山鉾として巡行に参加しているのが大船鉾です。
大船鉾は、神功皇后が新羅出兵を成功させて凱旋した際の船をモチーフにしており、後祭巡行の最後を務める由緒正しい鉾でしたが、禁門の変による大火で長らく失われていました。
今年2016年はその船首を飾る「龍頭」も復活し、152年の時を経て往時の姿を取り戻し、様々な人々の思いを乗せて巡行します。
祇園祭を楽しむための最寄り駅は?
出典 http://www.shikoku-np.co.jp/
祇園祭は、京都市内の中心で行われます。
お目当ての催事や山鉾によって最寄り駅は異なりますが、中でも押さえておきたい場所をピックアップします。
(1)宵山を楽しむなら「四条駅」
宵山期間のうち7月15日16日には、四条烏丸を中心として歩行者天国が設定されます。
露店も多く立ち並び、祇園祭の醍醐味を味わうことができます。
地下鉄四条駅はその祭の中心地にありますので散策の拠点として便利です。
(2)巡行を楽しむなら「京都市役所前駅」
京都市役所前は、前祭、後祭、花傘巡行の経路となっています。
特に後祭では花傘巡行も山鉾巡行もどちらも見られるスポットとなっています。
巡行のスケジュールを確認したうえで早めに場所を確保しましょう。
(3)かつての穴場スポット「烏丸御池駅」
山笠巡行のゴール地点である御池新町の最寄り駅です。
御池通りはかつて穴場スポットと呼ばれていましたが、年々知られるようになり人が増え、今では穴場とは言えなくなってしまいました。
とはいえ、四条通りや河原町通りと比べれば歩道の幅が広い上、祭の中心からやや離れているため、混雑に耐え切れなくなったときに素早く離れることができます。
まとめ
いかがでしたか?1100年の長きにわたって、京都の町衆によって受け継がれてきた伝統の祇園祭には細部にわたって日本の歴史がちりばめられています。
動く美術館と呼ばれる山鉾や、露店が立ち並ぶ宵山、にぎやかな祇園囃子に誘われて路地に入れば、ここにはない新たな発見もあるかもしれません。
今年の夏は千年の都の祭りを体感してみませんか?