最近耳にする機会が多くなってきたASDという言葉。いわゆる、自閉症スペクトルやアスペルガー症候群と呼ばれる障害です。周りが感知することが難しく大人になってから発見されることも多いこの症状ですが、皆さんは正しい知識をお持ちでしょうか。

出典 http://big5.soundofhope.org/
今回はこの見極めが難しいこの障害について、大人に表れがちな特徴をご紹介します。
ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)とは?
ASDとは Autistic Spectrum Disorder の略称で、自閉症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害をレベル別に分類したものです。有病率はおよそ150人に1人(約0.65%)。
ここには、典型的な自閉症やアスペルガー症候群、小児期崩壊性障害、レット症候群などが含まれており、これらを連続体(スペクトラム)として捉えることから自閉症スペクトラムと呼ばれています。
主な症状を分類すると下記のようになります。
病名 | 知的障害のレベル |
---|---|
自閉症 | 多くの場合、知的障害があり次の特徴を有する。
|
高機能自閉症 | 知的障害はない(初期に言葉の発達で、やや遅れあり)。自閉症の約2割がこのパターン。 |
アスペルガー症候群 | 言語障害、知的障害ともに見られない。 (高機能自閉症のうち言語障害のないものがここに含まれる) |
三つ組の障害
ASDの診断基準として主に下記3点が挙げられています。
- 対人関係の形成が困難【社会性障害】
- 言語機能発達の遅れ【言語コミュニケーション障害】
- 想像力や柔軟性の乏しさ【イマジネーション障害】
これをローナ・ウィングの「三つ組の障害」と言います。
大人に表れやすい特徴
ここでは、とりわけ症状を見分けることが困難であるアスペルガー症候群を中心にご紹介していきます。やはり、先述した三つ組の障害が顕著に特徴として表れているようですね。
社会性障害
アスペルガー症候群の人は、脳の発達に偏りがあるため理解の仕方が独特でそれ故に行動にも特徴が表れます。普通の人は当然のように理解している社会常識についても、身についていないことが往々にしてあるのです。
具体的には下記のような例が挙げられます。
・相手の気持ちを察することができない。
・目上の人になれなれしく話しかけたり、相手との距離感を図れない。
簡単に言えば、空気が読めないということですね。知的障害を持っているわけではないので、周りの人たちからすればただ単に嫌なヤツ、付き合いたくないヤツ、非常識なヤツになってしまうのでしょうね。
ただ、当人たちには悪気がないのです。具体的になぜダメなのか、なぜこうするべきなのか、順を追って説明してあげないと上記のようなことも理解できないのです。
言語コミュニケーション障害
彼らは、脳機能の発達に偏りがあるため相手の話を理解することが非常に苦手です。言葉をありのままに捉えるため、言外の意味やニュアンスを汲み取ることもできません。そのため、意思疎通が非常に取りにくいのです。
また、もっと恐ろしいのは相手の気持ちを理解する能力に乏しいため、人を傷つける発言を平気でしてしまうことです。それも割る気がない故です。
具体的にはこんな感じです。
・表情や身ぶりなど相手の意図を汲み取ることができない。
・相手の発言を待てず、自分ばかりしゃべり続ける。
普通の人から見れば「変わりもの」「思いやりのない人」に映るかもしれませんね。ただ、例によって彼らに悪気はありません。
ここも、こう言えば相手がこのような気持ちになるなど、しっかり説明してあげる必要があるでしょう。
イマジネーション障害
想像力が弱いため考えや発想を変えることを非常に苦手としています。普段の生活習慣や行動パターンを曲げようとしないのは、それが崩れると不安が強まるからです。
下記のような具体例があります。
・同じ洋服を毎日着てくる。
・家具など、ものの配置が変わると落ち着かない。パニックになることもある。
彼らは予定外のことが起こると、不安に襲われたりパニックに陥ったりします。逆に予定通りであれば安心感を持って取り組むことができるのです。
これは、指示を完璧にすれば完璧な仕事ができるということでもありますので、ルーチンワーク的な業務や極度の集中力が必要とされる業務であれば才能を発揮できるとも言えるでしょう。
3つの特徴を踏まえた対策
上記3つの特徴を考えると、いずれも当人たちに悪気はなく、自分はちゃんとやってるのにどうして怒られるのかと歯がゆい思いをしているのです。
少なくとも、両者ともに自分の立場からの決めつけをしてしまうと、不幸しか生まないでしょう。もし、これら3つの特徴を聞いて自分が該当すると思ったら、お医者さんに相談してみましょう。そして、治療を受けつつ改善を図ってみてください。そして、周りの理解が得られるようアクションを試みるようにしてみましょう。そうすれば、誤解の溝が少しは狭まるはずです。
周りの人ももしこのような特徴に気付くことがあれば、理解を示してあげてください。必要であれば医療機関の紹介や、仕事の振り方なども考慮してあげましょう。
両者ともにこの症状を理解し双方が歩み寄れば、誤解が解けより良い関係を築いていけると思います。
まとめ
ここまで、ASDの大人に表れやすい特徴をご紹介してきました。
非常に見極めが難しい症状のために、誤解されて理解を得られず心を痛めている人が多いアスペルガー症候群。まずは、この症状の理解から始めていく必要があります。それは当事者のみならず、周りの人たちも同様です。
多様性を受け入れられなければ、社会の発展はありません。あのアインシュタインやレオナルド・ダ・ヴィンチもこのアスペルガー症候群であったと言われているくらいです。彼らの偉大な業績はここで語る必要もないほど大きなものでした。
相手を知り理解し、それを受け入れることの重要性を今一度認識してみるのはいかがでしょうか。